ご馳走様でした−合掌。

トゥール・ダルジャンのオーナー、クロード・テライユ氏が享年88歳で亡くなった。

食べに行った際、丁度隣の席で(=末席だったのである)、若い奥さんとゆっくりと楽しそうに遅い昼食をとっていた。給仕のサーブに目を光らせつつ、1時間に一回、店内をゆっくり回ってゲストに挨拶をしていた。

舞台俳優を目指していたというテライユ氏は戦後直ぐに店を父親から譲り受けて「幸せな囚人」になったという。アンリ3世時代の1582年に立てられた建物で、1650年以来存在するレシピを提供する舞台の名俳優になったわけだ。

テライユ氏は、第二次世界大戦の名将ルクレルク機動部隊の英雄だった。パリ占領の間に食された鴨は3万羽に上る。その間、彼はどんな気持ちだったのだろうか、と想像が膨らむ。

2006年度、トゥール・ダルジャンの星はとうとう残り1つになってしまった。ちなみに、三ツ星を獲得したのが1933年、2つ星となったのが1952年。確かに、むべなるかな、と思う。

しかし、人が死んで星になるのだとしたら、トゥール・ダルジャンの星は今ひとつ増えていることになる。

(08/06/06)