北海道知事選公開討論会観戦記、もしくはイグナティエフの新刊。
去る3月19日に、札幌は道新ホールで現職知事の高橋はるみ候補者と共産党を含む野党からの公式・非公式の推薦を獲得した佐藤のりゆき候補者の公開討論会を傍聴してきました。北海道新聞の招待企画で、そうでもなければ、深夜のテレビ放送か、ネットで観たに違いありません。
でもやはり、実際に足を運んでみるものです。大方の(?)予想に反して、会場はほぼ満席、討論の最中にも野次が少なからず飛んで、多いに盛り上がった討論会でした。それだけの注目や期待が集まっている、ということなのだろうと思います。
以下は、3月21日付け『北海道新聞』に掲載された「観戦記」です。当該インタビュー部分のみ、転載します。
□公開討論会を聴いて*北大公共政策大学院 吉田徹准教授 「泊再稼働」選挙戦の注目点□
道知事選の公開討論会を北大公共政策大学院の吉田徹准教授に傍聴してもらい、評価と感想を聞いた。
観光振興や地域医療の充実など、両氏の政策の方向性に大きな違いを見いだせなかっただけに、北電泊原発再稼働についての対応が異なったのは印象的でした。佐藤氏は再稼働を容認しないと明言した一方、高橋氏は国の判断を待つとして賛否を明らかにしませんでした。
再稼働問題は容認、反対いずれを表明してもさまざまな評価にさらされ、プラス、マイナスどちらに働くかは未知数です。現職に挑む立場の佐藤氏は、そのリスクを取り、高橋氏は戦略的に留保を選んだように感じました。両氏の立場表明が今後の選挙戦にどのように作用するか、注目すべき点の一つになりうるでしょう。
佐藤氏は道内の人口減少や道民所得の低迷などの現状を訴え、現職の道政批判につなげていました。ただ、高橋氏のどのような政策がそうした結果を招いたのかについて具体的な指摘は乏しかったと感じます。もう少し踏み込んだ内容があれば実りある政策論争に発展したかもしれません。
4選を目指す高橋氏も、多選批判を受けてでも出馬する動機について説得力のある答えを聞くことができませんでした。理由に人口減少問題への取り組みを挙げましたが、これは長年の課題。4期務めなければ実現できない政策を示すことが求められています。
今回、あまり語られなかった地方自治や道議会改革への姿勢など、投票日までに見極めたい点があります。どちらが道民の本当の味方になるのか、投票判断材料を提供するためにも、両氏は自身の考えを広く伝える機会を一層多くつくるべきでしょう。
(以上)
何れにしても理と情、静と動、陰と陽と、コントラストの効いた両候補者であるように思います。
もうひとつのコントラストは、「外」と「内」。高橋知事が中央と海外を意識して発言・政策を構想するような、いわば「インバウンド」な姿勢であるのに対して、佐藤候補は、まず北海道を変革してその上で魅力を対外的にアピールしていくような「アウトバウンド」な姿勢であったように感じます。
何れにしても、色々な意味で自分の一票を何れに投じるのか、試される選挙になるのかもしれません。
統一地方選とは関係なく、個人的には、先の総選挙で落選した前職の議員さんと久しぶりにゆっくり懇談できたのが最近の収穫でした。激励とお疲れ様の意味も込めて、イグナティエフの新刊を贈らせて頂きました。
- 作者: マイケルイグナティエフ,Michael Ignatieff,添谷育志,金田耕一
- 出版社/メーカー: 風行社
- 発売日: 2015/02
- メディア: 単行本
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イグナティエフは国際政治で人道的介入論の論者として有名なジャーナリスト・エッセイスト・研究者で、母国カナダの自由党の議員、次いで党首になった人で、この本はその彼が落選するまでの奮闘記です。
先の前職の議員さんも「感銘を受けた」と寄せてくれました。どんな選挙でも落選はつきもの。落選した全ての政治家に、その政治家を応援していた支援者、あるいはこれから政治家に挑戦しよう、と思っている全ての人々にお薦めしたい本です。