左のガルシア・マルケス。

最近、電車に乗っていると勉強になることが多い。
考えてみれば、生活スタイルの個人化と親密圏の肥大化で、自分と普段関係しない複数のミリューの人間が一堂に介す機会は公共交通機関しかない(そこに現れない人々も当然いるのだが)。

この間は、樋口恵子に顔も声も格好もそっくりな栄養調理専門学校の先生と、その学生と思しき学生2人との会話が耳に入ってきた(先生『こんな大きな声で喋ったら周りの人に全部きこえてしまうわねー。みんな耳をダンボにしているわよー』←その通りです)。
なかなか熱心な先生のようで、食品会社の給与水準から就職に有利な視覚からバーゲン情報まで結構な勉強になった。

おばさんのおしゃべりには2割くらい人生の知恵みたいなものが含まれている。問題はその2割の秘密に辿り着くまでに8割の無駄な情報を聞かなければならないことなのだが、この学校の先生曰く、

「世の中に存在する食べ物で一番栄養価が高いのはオムライスである」
スウェーデン料理はフランス料理と同じものである」
「男はだまっていても出世する生き物である」

というのは、真実かどうかはともかく、結構な知恵が含まれている情報なのではないかと、一人得した気分になった。

もう一回は、目の前に派手なバッグを持った大学生と思しき乗客を見かけたときである。
なんてポップなバッグなんだろうか、とそのバッグを睨みつけていると、その布地に張り合わされたアルファベットが文字になって頭に飛び込んできた。

「GARCIA MARQUEZ GAUCHE」

頭の中は結構な混乱である。
「確かにガルシア・マルケスなるブランドがあることが存在しているのは知っている。しかしこれに『GAUCHE=左』をつけるとなると、あのガブリエル・ガルシア=マルケスということなのか?! いや、それとも単に『イヴ=サンローラン・リヴゴーシュ』みたいなブランド展開戦略のラベルなのか?!」

そう、恥ずかしいことにボクの頭の中ではブランド=ガルシア・マルケスと小説家ガルシア=マルケスが全く無関係なままに存在していた。これが「GAUCHE=左」という言葉でひとつの像を結んだという次第なのである。

しかしノーベル賞小説家でありフィデル・カストロの盟友であるガルシア=マルケスが国産ブランド名に化けるというのも不思議なものである(その由来はここ辺りとか)。

さて目の前に座っていたあの娘は小説家を知っているのだろうか。
ガルシア・マルケス商品には彼の小説を一冊、抱き合わせ販売をして欲しいと願う学習過程なのでした。

gauche

↑と↓

百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))
(2006/12)
ガブリエル ガルシア=マルケス

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