ロマンスグレーの政治学者。

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来週カフェ・ド・フロールで朝デートの約束をしたロマンスグレーの政治学者Pascal Perrineau氏。

 行きがかり上、パリ政治学院のCEVIPOF(フランス政治研究センター)の研究者と付き合うことが多いのだが、実はこのCEVIPOFが内紛に見舞われているという。ちらちら噂は聞いていたが、「今日どのようにして政治学を学ぶのか」と題された「ル・モンド」の記事で大々的に報道されていた。

 ことの発端は、CEVIPOF所長のパスカル・ペリノーの任期が5期目(17年目)に突入したことによるものだ。この「長期政権」に対してCEVIPOFの研究者の14人が反旗を翻し、CEVIPOFから離脱して新たにシアンスポに設置される「欧州政治研究センター」に移籍することになったという。14人というと所属研究者の約半数だから、結構な数になる。中には有名な研究者もいる。

 ペリノー氏は教養もあるし頭の回転も早く、人当たりもとてもいい。意見は分かれるかもしれないがハンサムだからテレビやマスメディアで引っ張り凧だから、実は「単なるやっかみ」との観方もある。だから、内紛の直接的原因は「人」ファクターなのだそうだが、記事はもう一歩踏み込んで、「選挙研究」と「構造主義」の対立もある、と解説している。

 CEVIPOFが過去10年のうちに急激にプレゼンスを高めたのは確かだが、それは選挙のたびに解説・分析本を緊急出版し、選挙当日の討論番組に研究者を出演させるメディア戦略が成功したためでもある。2007年の大統領選では内務省から莫大な研究資金をとって、大規模な世論調査を継続して行ってきた。ペリノー氏はいわばこの「選挙分析という戦術」の功労者だが、これに対して有権者の政治化プロセスや政党組織分析をアプローチにするより「政治社会学」派との軋轢が生じた、というのが記事の見立てだ。

 折りしもフランスでは大学改革反対で、デモとロックアウトの嵐が続いている。そんな中で政治学者たちは「コップの中の嵐」に明け暮れている場合ではないのではないか、と人事ならずも、心配するのである。