「首相府の地獄」@TV5

先々週からフランス国営のTV5で「L'Enfer de Matignon(首相府の地獄)」という、連続インタビュー番組が放映されています。http://www.ina.fr/actualites/diffusions-radio-tele/
もともとはル・モンド紙のジャーナリストの本とのコラボ企画です。
http://www.amazon.fr/Lenfer-Matignon-Rapha%C3%ABlle-Bacqu%C3%A9/dp/2226186808
総務省と結託した某国営チャンネルと違って、ストリーミングでこうした番組が観られるのは有難いことです。http://www.france5.fr/videos/?id=2897
驚くのは、第五共和制下の首相経験者12名がインタビューに直接答えていることです。70年代に首相を務めたメスマルなんてもう90歳!生きていたのすら忘れていました(^^; (今年逝去したバール首相も出ています)。大統領の影に隠れて、普段陽の目を見ることの少ないフランスの「首相」に着目した良質な番組です。

現首相を除いて基本的には政治の第一線が退いた人間ばかりなので、かなりフランクに、自身の経験、心情、悔恨を語っています。飽くまでも控えめなラファラン首相、自政府の成果を主張するジョスパンとド・ヴィルパン、リラックスして自由なジュペ首相、淡々としたバラデュール...それぞれの政治的イメージと正反対に思える、貴重な横顔を知ることができます。

中でも、ロカール元首相は相変わらずの雄弁さで過去を語っていますが、ミッテラン大統領への愛憎に満ち満ちています。ミッテランの人生の政敵だった彼としては仕方ありませんが、ミッテラン時代が過去のものとなった現在、闘った相手への愛情のようなものもあるのかもしれません。僕自身がインタビューしたときにも感じました。そんなミッテランは、ある人が証言するに「ある日、自分の書斎で紙を丸めて投げ捨てた。そしたらロカールは、床に這いつくばってその紙を拾ったんだ」と言い放ちました。政治家として、人間が生きていくのは、確かに「地獄」に近いのかもしれません。

不思議なことに1995年、時のシラク政権下で歴史に残るストで政治的生命を実質的に奪われることになったジュペ首相が、一番魅力的な男に感じました。そんな風に視聴者に思わせるという点でも、この番組は成功しているのかもしれません。