新刊が出ます。

nihon.jpg 5月22日発売 「日本を変える『知』」(光文社)
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334975715
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4334975712.html

芹沢一也荻上チキ編『日本を変える「知」』の「政治編」に執筆をしています。
執筆陣は飯田泰之さん、本田由紀さん、鈴木謙介さん、社会哲学者の橋本努さんと豪華メンバーになっています。

「経済、政治、教育、社会、思想という五つの観点から、新たな最高の知を結集させて、現代日本社会の現状と未来を浮かび上がらせる」というのがコンセプト。本には、執筆陣によるクロスインタビューも収録されています。詳細はこちらへ。

内容は、以前「シノドスセミナー」でお話させていただいた内容がベースになっていますが、セミナー紹介として、編者の荻上チキさんが文章を寄せくださってます。

「政治は、私たちの社会を適切に運用していくための手段である。ただし、私たちはその手段について、必要十分な知識を持っているとは言いがたい。例えば法学の領域において、憲法改正や死刑をめぐる感情的な議論は盛り上がっても、参加するプレイヤーの多くにそもそも法とは何かといった前提が理解されていないのと同様に、政治に関する知識もまた、それが正しく共有されないままに、不完全な情報だけを頼りに投票行動が行われるというのが、多くの人にとっての「政治」になってしまっている。
 
 一方で、政治をめぐる報道の多くが「永田町政治」といった群像劇に集中しがちな、失言や「漢字の読み違え」といった「どうでもいいネタ」で支持率が大きく左右されてしまう現状を憂うならば、あるいはそうした現状を、安易な「マスゴミ批判」「イデオロギー批判」「民度批判」といった仕方で発散してしまうナイーブさを避けるのであれば、新たに堅実な「語り方」を手にしなければならないだろう。ディシプリンとしての「政治学」は、そのための礎を私たちに提示してくれるはずだ。
 
 吉田徹氏は、政治に関わる様々な事象に関心を示し、幅広い知識を軽やかにつなげる、気鋭の政治学者である。ともすれば「人脈の歴史」や、年号と事件の開陳合戦になりがちな政治談義だが、吉田氏は個別の政治事象と抽象的な思想的背景を切り結び、同時に具体的な政治工学と人々のインセンティブや欲望の動向に見取り図をたてる。既に様々な論考を発表しているが、こうした手並みは本セミナーにおいても如何なく発揮されている。
 
(中略)
 
 特に興味深いのは、吉田氏が、投票制度のような「政治のための方法論」によって(ゲーム理論のように)投票行動のインセンティブが大きく変わることなどをあからさまにしたうえで、そうした「政治工学」にではなく、むしろ「討議/闘技」といった「古めかしい」手法に着目していることだ。こうした議論は、「二大政党制」「政権交代」「マニフェスト」などのキーワードが連想されるような、昨今の政治状況を鳥瞰し、相対化するためのきっかけを与えてくれるだろう。」

この「ディシプリン」としての政治学に何ができるのか。
今しばらく、想いを巡らせているところです。

※なお、私の担当章中、ランシエールに関する部分で校正が反映されていない部分があります。
 第2版で訂正がなされる予定です。