キムタク、総理へ。

キムタク主演『チェンジ』が始まった。
あ、月9観なきゃ、なんてそそくさと帰宅するなんて大学生以来のことだろうか。

週刊誌では、弘兼憲史の『加治隆介の議』に酷似しているなどといわれているが、番宣ですでに総理大臣になることが予告されているのだから、要はアインビルドゥングスロマンなのだろう。

業界では政治モノのドラマはヒットしない、というのがジンクスだそうだ。確かに過去には日テレの『レッツ・ゴー永田町』と、やはりCXで田村正和主演の『総理と呼ばないで』もあったが、視聴率は余り振るわなかったようだ。

それもそうだろう。日本の選挙なんて、日本の刑事ものと同じように泥臭いだけで、お涙頂戴になってしまう。想田和弘の『選挙』に勝る政治ドラマは、日本ではできそうにない。それは日本の政治という「フィクション」そのものの不出来さに由来しているからではないだろうか。いくら総理大臣になったって『ホワイトハウス』のような舞台設定もできない。そんな政治の物語が面白いわけがない。「子供たちの未来のために日本を良くしよう」という程度のメッセージしか政治ドラマに込められないのなら、なおさらだ。政治って、もっとエキサイティングで残酷で滑稽なものだ。

しかしこの何のひねりもない番組タイトル。オバマの候補者指名とともに、ジンクス挽回になるだろうか。

ところで母親役の富岡純子が中々いい。声と言葉を聴いていると、どういうわけか涙腺が緩む。

PS:下記は某議員さんからもらった「チェンジ」の感想です。さすがに臨場感溢れる感想になってます。
―quote―
 以前、政策秘書在職中に、「レッツゴー永田町」というドラマに絡めて政治の現場からのメールをお送りいたしました。あれから6年半。その間、私自身の立場は大きく変わりましたが、政治(特に国政)の状況は大きく変わった側面とそれでもなかなか変わらない側面とがあります。

第1回のあらすじ
 大物代議士だった父の事故死により急に補欠選挙に無理矢理担ぎ出された朝倉啓太(木村拓哉)。父に反発していたからこそ教師という道を歩んでいたのに、急激な方向転換に戸惑いつつも周りに流されての選挙戦に突入。受け身であったが、父の18年前の不正疑惑が突然明るみになり窮地に…。そうした中、最後に自分のコトバで語り出すことが、最後の追い上げとなり、選挙戦は最後の最後までもつれて…。

○総理の入院
 「病める政治家たち」という本があります。病気はいつだって政治家にとって大きな問題です。ときに致命傷にすらなりかねません。だからこそ、病気は隠すということがこれまでは行われてきました。加治隆介の議」という漫画の中にも、余命宣告されつつもそれを隠しつつ政治改革に命をかけるある総理が描かれていました。
 一方、今年に入ってから小沢一郎民主党代表が若い頃のガンを告白したり、一方で福田康夫首相も胃ガンを認めたり、と、率直に語るようになってきたように感じます。政治家の健康不安が必ずマイナスになるという時代から少しずつかわっているかも知れません。ただ、袋だたきになっている政治家の「トドメ」になることは大いにあり得るでしょうね。

補欠選挙
 「誰でもいいからいませんか?」(深津絵里
 主人公朝倉啓太(木村拓哉)の父である衆議院議員が事故で亡くなり、急きょ補欠選挙をやることになったのですが、その際に大物代議士の女性秘書(深津絵里)が言ったコトバです。
 選挙に必要なのは、「勝つこと」。そのためのすべての事柄は手段に過ぎません。候補者が誰であるかも、経歴が何であるのかも、得意分野・目的等々…。
 そうした中、親族それも直系卑属男子というのは、後援会・党本部・有権者を納得させるため有効であることは、今さら言うまでもありません。だからこそ、現職議員の急死の際に、その息子である木村拓哉が担がれたということです。
 「でも、顔だけはいいんです。政治に疎い女性票が来ます」(深津絵里
 無党派層に食い込むためにはどうすればいいか。今、各種選挙で各政党・候補者がアタマを悩ませているところです。

○選挙戦で・「有権者に訴えるキャッチフレーズだ。・・・政策なんて当選してから考えろ」(阿部寛
 選挙プランナー阿部寛)が政策の必要性について聞かれた際の答えです。悲しいかな、かなり現実です。「一人でも多くの有権者とふれ合え」とか「少しでも駅前で露出しろ」と言われます。
 だからこそ、有権者が事前に選挙の際にチェックすることが必要だと思います。そのような選挙ではなく、マニフェスト型選挙の必要性を私自身も訴えているのですが。まだまだ道は遠いです…。

・「選挙って聞いただけで、血がたぎると」(主人公の母)
 私もです。かなりたぎります(笑)。阿波踊りに血がたぎって、あちこちで踊る人に似てます(多分)。先日も近くの某市長選挙で数時間マイクを握ってきました。楽しいですよ。

・「選挙こそは唯一法律で許された戦争なんだ」(阿部寛
 民主主義とは、世の中にある限られた資源配分をどのように決めるかということを、武力や神のお告げと言った前近代的な手法によるのではなく、みんなで話し合って決める。合意出来ないときは多数決で決める。そういうことです。 「クニミツの政」という漫画の最初の方で、「有権者のかわりに激論を交わすのが政治家の仕事」というくだりがありました。有権者に選ばれたからこそ、それを手がかりに議会という場で主張を戦わせる。いわば、そういう戦争です。

・選挙中に選挙区内のレストランで若い女性(加藤ローサ)と食事
 絶対、ご法度です。ロクなウワサになりません。私も、食事は選挙スタッフと事務所で食べるというのが基本でした。そうでない場合には、家で食べます。

・「(この選挙)アウトでしょ。…いいよ頑張らなくて」(木村拓哉
 これも絶対、ご法度です。いくら身内でも、士気を損なうことを簡単に口にしてはいけません。いわば、総大将が負けると言っては戦にならないということです。
 実は最近、これに近いことをある人に言われました。我々政治に携わる人間だけでなく、いわば当たり前かも知れませんが。

・「俺たちに反論させないように、投票日直前に(父親の疑惑を)出してきたんだよ!」(阿部寛
 怪文書が出るのは、投票日(日曜日)の直前の木曜日の夜あたり、とも言われます。木曜日の深夜に怪文書をまかれる→金曜日に気づき、対応を練る→印刷して金・土で配布する・・・間に合わない(涙)というパターンです。そんなに都合良く手配できるとも限りませんから。
 では、どう対処するか?
 ?無視、?無視、?無視、しかありませんね。「人気者が叩かれるのは仕方ないんだ」とうそぶいてみるとか。

○選挙事務所の映像
 たまたま、妹たちと見ていたところ、選挙事務所シーンで「なつかしい!」と二人がはしゃいでいました。実は、私の選挙の際にも、ドラマ内のスタッフのジャンパーと同じ青色を使っていました。為書とよばれる応援メッセージを壁にデカデカとはり、大きなダルマを置き(うちでは、スタッフの手作りダルマでしたが)…。
 しかし、いろいろと細かいツッコミも。
 「候補者が疲れてない。声も枯れてなければ汗もかいてない」
 「事務所が妙に落ち着いてる。きれいになってる。もっと雑多で殺気立ってるはず」 等々。

○当確・・・の誤報
 これが、ないようで結構あるんです。しかも、選管が誤報を発表するという事件も昨年の春ありました。
 では、どこで「当確」となるでしょうか?
 有権者の皆さんは、テレビで知るということになるでしょう。政治関係者は、開票所に派遣したスタッフやマスコミから聞いて分析します。そして、実際に当選の万歳をするのは、テレビで当確がついたときです。
 私の経験では、某局が当確を出すことで万歳をすることが多いです。「他局はときどき誤報があるから」とも昔言われました(最近はいちいち確認していませんが)。
 ちなみに、数年前のある国政選挙の際、私も応援する民主党候補と与党系候補とがかなり接戦となっていました。その時、選挙事務所で当選を確信したのは、開票が進む中、大物政治家が続々と事務所に来たことです。あ、来たな、という感じでした。