ベルナルド・ベルトリッチ監督『1900年』(伊=西独、1976年)

北大の高等法政教育研究センターのニュースレターからの転載。
http://www.juris.hokudai.ac.jp/~academia/newsletter/index.html

quarto

イタリア人画家、ジュゼッペ・ペリッツァによる有名な「第四身分(il Quarto Stato)」のフェードインから始まるこの映画は、ベルトリッチ監督が3年の歳月をかけて撮ったものの、その5時間16分という上映時間が災いして興行的には大失敗に終わった。しかし、デニーロ、ドパルデュー、ドナルド・サザーランド、その後監督のお気に入りになった美しきドミニック・サンダ(『暗殺の森』)等が、イタリアの資本家、労働運動、ファシズムの3つの潮流をアンヴィヴァレントに体現しながら、展開されるロマネスクな世界はそのまま現代史の良質な教科書ですらある。
 
ベルトリッチは「全ての愛と情熱を持ったブルジョワのマルクス主義者」であるがゆえに常に「自分のルーツであるミリューにつかまってしまう」ことを恐れた、という。確かに70年代末からの彼の作品は、激動する時代から逃避する個人を主題に据えていっているようにみえる。それは彼がマルクス主義者であったゆえなのかどうか、この「Novecento=新世紀」という原題を持つ映画を観る度に気になる。