ペコちゃんぺこり。

「大手菓子メーカー「不二家」(本社・東京)の埼玉工場で消費期限が切れた牛乳を使ったシュークリーム約1万6000個を製造・出荷していた問題で、同社が持つ全国5工場に対して、所在する自治体が立ち入り検査をしていることが12日、わかった」(1月12日付朝日新聞

ちなみにこの「消費期限」、食品衛生法によると「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の食品又は添加物の劣化に伴う衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限を示す年月日」と定義されている。

シュークリームの中に腐ったカスタードクリームが入っていて、それでもって消費者がお腹を壊した、というなら、この騒ぎも解る。しかし雪印が食中毒を起こした問題とは時限が異なる。「工場関係者全員が黙認していた」という報道が正しいのならば、その全員が食中毒を起こそうと推測するのは適当ではない。むしろ、食品の安全(=加工する分には問題ない)を確認した上で利益マージンを確保しようとした、と考えるのが妥当だろう。

食品衛生法のいう「衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限」でしかない消費期限を越したものがあったからといって、眉をひそめるほどのものではないのではないか。そればかりか、これだけ外食産業華やかりし日本の食文化がいかに貧困かをさらけ出しているだけのような気がする。

ちなみに、うちの冷蔵庫には結構「賞味期限」切れの食物が入っている。食パンとか牛乳とか、ベーコンとかマヨネーズとかタルタルソースとかキムチが代表選手である(食品衛生法での「賞味期限」とは「定められた方法により保存した場合において、食品又は添加物のすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日」、要は最大のパフォーマンスを保証します、という程度のことである)。

特に乳製品や漬物といった「醗酵」食品群は、「腐る」こと自体が仕事なのだから、消費期限が多少後ろにずれても問題はない。そもそも、たくあんとか梅干とか、保存食品にすら賞味期限があるのは摩訶不思議としかいいようがない。

食品の匂いを嗅いでみる。目で質感と色を確認してみる。舌先で味わってみる。腐っていればカビを取り除く。自分の舌に自信があるのなら賞味期限を設定するのは、食品を摂取する側であるべきである。それこそが食育の目的だろう。

不二家を特段擁護したいとは思わない。でも、腐ることが許されない社会はどこか不健全ではないかと思うと、冬空の下のペコちゃんがやはり不憫に思えてならないのである。