「まぼろし(Sous Le Sable)」

女性は引きずらない、といったのは誰だ。

それにしてもオゾンは舌を巻くほど手数の多い監督だ。
ドラマティックな悲劇を、さらっとした日常の中に埋め込んで、喪失の痛ましさを浮き彫りにしていく。電話の着信音、フローリングの軋み、パスタのゆで方、タバコの葉が燃焼する音、それらひとつひとつを雄弁な小道具に仕立て上げている。

だから最初の30分だけで、それだけで、奥行きがあって余韻を残す。
オゾンの画像には一貫した手法らしきものがない。その時々の瞬間で直感的なまなざしを採用する。その不安定さが映画の主題と調和して、ベタにならないで済んでいるように思える。

シャーロット・ランプリングには抑制された凶器がよく似合う。幾つになろう「愛の嵐」の時と変わらない不安定な危うさと美しい肢体のままだ。彼女がヴァージニ・ウルフを朗読するシーンなど背筋がぞくぞくする。

ちょうどパリに行った際に、エドワード7世劇場でこの脚本の舞台をランプリング主演でやっていた。もちろん、チケットは入手できず、でもそのシーンがあったなら何としてでも生で聴きたかった。
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