「共通教科書」を生んだもの。

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7月10日、仏独「共通教科書」のドイツ語版がお披露目された。もっとも「共通教科書」というのは日本的な表現で、仏語では"manuel d’histoire Franco-Allemand "、独語では"deutsch-französisches Geschichtsbuch"で「共通」という言葉はどこにもない。教育制度が両国で大きく異なるのだから、当たり前の話だ。

構想に着手されたのは2003年1月のことだから、3年半の年月をかけて、「統一見解」に漕ぎ着けたことになる。特に両国のアメリカ観は異なる。
内容(全5章の目次)は以下の通り。

1.第二次世界大戦の記憶(45-49年)
2.米ソに挟まれた欧州(49-89年)
3.世界の中の欧州(89年−現在)
4.技術的・経済的・社会的変容(45年−現在)
5.独仏関係(45年−現在)

教科書に含まれる文章は全体の3割だから、仏として「教科書」というより「補助教材」的な位置づけだ。

関心したのは、出版記念の会場がザールブリュッケンだったことだ。
面積の最も少ないW杯の会場もあったザール州は、第一次世界大戦国際連盟信託統治となり、かつ第二次世界大戦後は住民投票によって仏独何れに帰属するかが問われた。54年のW杯では、「独立国」の一つとしてトーナメントに参加し、最終的にはWEU(西欧同盟)の管理下に入ることも想定されていた。独仏間紛争の象徴的地域であると同時に、両国に挟まれた「揺らげる領土」が、その後欧州石炭鉄鋼共同体の出発点となった。そして今は独仏和解=欧州統合の象徴にまでなった。

ことあるごとに「内政干渉」「いうべきことはいう」とつべこべ言っている日本は飯事をしているようにしか思えないのは至極当然だ。