サッカーよりスモウ。

chirac

フランス-スペイン戦は中々面白かった。
というより、いつもながらの欧州クラブ杯の光景が展開されていたとでもいうべきか。

他方で、シラク大統領が恒例の7月14日の会見を前にしてテレビ・インタビューを受けた。大統領選を控えて浮き足立つ与党議員団ににらみを訊かして、息絶え絶えのドヴィルパンを援護射撃しようという意図がみえみえだ。

大した反響も呼ばず、おそらくサルコジに対してのけん制にもならず、ドヴィルパンの支持上昇にもつながらないだろう。失敗である。

ボクが見逃さなかったもうひとつの「失敗」がある。
シラクはインタビューで、「国民1人1人がフランス・チームを応援すべきだ。私だって、例えば、ブラジルと決勝戦で当たって勝つところがみたい」といってしまったことだ。

トーナメント表をみれば、フランスが順当に勝ち進んだとしてブラジルと当たるのは準決勝でである。決勝で対戦するのはありえない。

シラクにしてみれば、1998年の夢を再び、ということなのだろう。あの時、シラクは大統領官邸にフランス選手団を招いて、意気揚々だった―まさに共和国大統領としての晴れ舞台だった。2006年にフランスが勝利できれば、惨めな任期終盤は、何となく覆い隠せるかもしれない。
フランスのW杯にしか依存できない大統領。可哀想な大統領。

でも、パルク・デ・プランスでそれこそブラジルとの決勝選の時、選手の名を1人づつ叫ぶ観衆に混じって観戦するシラクが(日本選手の君が代と同じように)、ちょっとワンテンポ遅れて口をパクパクしているのを良く覚えている(はっきりと発音できたように見えたのは『ジダン』という名前だけだった)。ボクはたまにあの時の映像を思い出して、ぷぷっ、と思い出し笑いすることにしている。

シラクは、自国のサッカー選手よりも日本の力士の名前のほうを、W杯のトーナメント表よりも大相撲の星取表の方を記憶しているに違いない。知らないなら、知っているフリをしないで威厳を保っているフリをしていればよいのに。

そういうことができないのがシラクの浅薄なところであり、かつ親しみの持てるところである。しかし、共和国大統領にとって親しみは必ずしも求められない資質なのである。