札幌「シアター・キノ」で『復讐者たち』(7月31日公開)の解説トークを行いました。

市民が支え来年30周年を迎える札幌「シアター・キノ」。単館系・インディペンデント系を含め、良質な作品を札幌市民に届けています。 これまで何回かアフタートーク(最初は2006年だった記憶も)を依頼されてきましたが、今回『復讐者たち』(原題"Plan A"ド…

「ソーシャル・ディスタンス」の歴史的由来。

コロナ禍とともに、「ソーシャル・ディスタンス」という言葉が日常生活にすっかり定着するようになった。「社会的距離」とも訳されるが、なぜ感染を防ぐための物理的距離が「社会的」と呼ばれるのか、長年不思議に思ってきた。リモート・ワークにせよ、時差…

『アフター・リベラル』解題

9月16日に、講談社現代新書より『アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治』を上梓しました。 タイトルを見ただけでは、内容が分かりにくいかもしれません。 その触り(序章)は、こちらで読むことができます。 さらに、本のメッセージとそこに込めた意図はこち…

【転載】リベラリズムの歴史的な綻び

多くの先進国で、いわゆるポピュリズム政治が常態となりつつある。国よって差はあるが、右派ポピュリスト政党が新たに獲得している主な支持者は労働者層である。「ラストベルト」という言葉に象徴されたように、1970年代以降の製造業の衰退は、左派の金城湯…

フィリップ新内閣について。

先に時事通信の会員サイト「Janet」で「【対談】遠藤乾氏・吉田徹氏 マクロン外交は国際協調主義ーー大統領選で生じた亀裂を修復できるか」を掲載したところですが、5月17日のエドゥアール・フィリップ内閣の発足にあわせて追加インタビューがありました。フ…

2017年フランス大統領選について(記者会見)。

4月26日に日本記者クラブで「フランス大統領選」についての会見を開いてもらう機会がありました。 www.jnpc.or.jp ポイントは、1.従来の保革対立が成り立たない「歴史的選挙」であることの意味、2.しかし、それゆえに誰が大統領となろうとも統治に困難を抱え…

国際ワークショップ「ポスト政党政治時代のデモクラシー」のお知らせ。

基盤研究(A)「政権交代の比較研究と民主政治の可能性に関する考察」(代表 山口二郎)による国際会議を開催します。科研メンバー以外も参加可能ですので、奮ってご参加ください。 (2月2日追記:好評につき、会場のキャパシティもあって事前登録制となりま…

「シン・ゴジラは泣いてはいないか」

話題の映画「シン・ゴジラ」。制作委員会方式ではなかったこともあり、通常の大作のようなメディア・ミックスでの宣伝がなかったにも係らず、この夏にすでに230万人以上を動員、興行収入も34億円以上と興収成績ではトップを走る。経済誌やネットメディアも相…

「信頼でつながる社会」

先に、北海道消費者協会の年次大会の基調講演を依頼され、そこで「信頼でつながる社会~小さな力を持ち寄って」というタイトルで90分ほどお話をさせていただきました。 もともとは、札幌市西区で仲間とやっている「子ども食堂」についての報道を事務局の方が…

「英EU離脱とポピュリズム」(インタビュー記事)

(本エントリーは2016年7月9日付『公明新聞』「土曜特集」に掲載されたインタビュー記事を編集部の了解を得て転載したものです) 【リード文】 英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱支持が多数を占め、国内外に混乱が生じている問題に対し、ポピュリズム(大…

民主主義とは「フィクション」である。

「民主主義ってなんだ?」と問われれば、それはひとつの「フィクション(=擬制)」としかいいようがありません。「フィクション」といって難しければ、「~べきであることが想定されている」ということです。 どういうことか、日本国憲法の前文を通じて確認…

「私の『イチオシ』収穫本」

ほぼ2か月に1回、『週刊ダイヤモンド』の書評コーナー「私の『イチオシ』収穫本」の担当がまわってきます。 佐藤優氏の3冊短評コーナーと書店員が紹介する書評コーナーに挟まれて、下欄には過去の「名作」を紹介するコラムもあり、本紹介については中々に充…

【書評】ミシェル・ウエルベック著『服従』の読み方 。

服従 作者: ミシェルウエルベック,佐藤優,大塚桃 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2015/09/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (27件) を見る この本は二度に渡ってパリを襲った同時テロとともに人々の記憶に長く残るのだろう。時は2022年…

ドロール・アーカイヴ。

先にジャック・ドロールのアーカイヴが整頓・公開される運びになりましたが、今度は博士課程学生のためのその史料調査のグラントの募集が出ました。3ヶ月間で6000ユーロと、ちょうど良い感じ、もう少し若かったら応募したのに、と思います。 Jacques Delors'…

フランスにおけるベーシックインカムの提案。

先にツイートもしましたが、フランスの厚労相(ミリアム・エル・コムリ労働・雇用・職業訓練・社会ダイアローグ相)が機関「全国デジタル評議会」に委託して1月に提出された「デジタル労働雇用:新たな道筋(“Travail emploi numérique : les nouvelles traj…

欧州大学院がドクターを募集中。

3 DOCTORAL RESEARCH GRANTS in History at EUI (2016-2020)PanEur1970s on 9th October 2015. We are looking for three PhD candidates who will study these processes – from archival as well as published sources – in three countries: East Germany…

安保法制反対デモを政治学でとりあえずみてみる。

ここ最近、立て続けにオーディエンスの多くが大学生で、彼ら/彼女らの前で話すという機会がありました。 話す内容そのものとは直接に関係ないのですが、時節柄、その関心は若者と政治に集まっていて、中でも「デモ」について関心が高いということが伺えまし…

「野党とは何か」。

1993年の自民党の下野、続いて自公政権の時代、2009年の政権交代選挙、続く2012年の自民党の政権奪取――日本でも、自民党の一党優位体制が崩壊してから一程度の時間が経ちました。 2012年から政権を担っている自民党政権はいまのところ堅調のようですが、少な…

写真家サルガドの旅道。

いよいよこの8月に映画『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』が封切になります。 映画「セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター」公式サイトsalgado-movie.com 報道写真家セバスチャン・サルガド追った記録映画 「父は世界の希望を見いだし…

大学での政治の「教育」を考える。

先のBlogosのエントリに日比嘉高「「自民党サークル」はありなのか――18歳選挙権と大学の中の政治」がありました。 「自民党サークル」はありなのか――18歳選挙権と大学の中の政治 ここで日比氏は、一般論として大学生が政治に関心を持つことは良いことだとし…

「内山秀夫遺稿集刊行委員会」御中

謹啓 惜春のみぎり、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。 この度は編『内山秀夫 いのちの民主主義を求めて』(影書房)を御恵投いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。 刊行に当たっては、これまで何度か電子メールでやりとりをさせて頂いてお…

「吉田徹のフライデー・スピーカーズ」三角山放送局(5月29日)でした選曲。

「こんにちわ、吉田徹のフライデー・スピーカーズです」というのも、5月で二回目になりました。まだ慣れません、誰にも向かって喋らないという、このラジオというコミュニケーション。 FM76.2Mhz 三角山放送局 internet radio from sapporowww.sankakuyama.c…

「くじ引き民主主義」を考える。

去る統一地方選挙では、選挙の結果云々よりも、その前から無投票選挙の多さが注目されていた。千葉県や埼玉県などの首都圏でも無投票選があったから、地方に限った話ではない。道府県議選では選挙区の33.4%、総定数の21.9%が無投票で選出され、これは記録…

「右傾化」は「左傾化」とともに。

4月11日の朝日新聞(朝刊)で掲載された「右傾化」についてのインタビューに刺激されたわけではありませんが、「右傾化」を論じる場合は、国を問わず、中々に難しいものがあるようです。 (耕論)「右傾化」 三浦瑠麗さん、平沼赳夫さん、さやわかさん:朝日…

「『55年体制』に政治の本質をみる」(大阪版 毎日新聞夕刊3月26日付「ぶんかのミカタ」より転載)

今では誰もが当たり前に使う「55年体制」という言葉は、半世紀も前に政治学者の故升味準之助氏が発案したものだ。彼は「現在の政治体制の構成がいつできたかときかれれば、私はためらわず1955年と答える」とその論文「1955年の政治体制」(1964年)で書き、…

青少年の国際意識比較調査(フライデースピーカーズ/三角山放送局で話したこと)。

この間は、FMラジオの三角山放送局(@札幌)での初メインスピーカーでした。2時間の番組ですが、曲とCM入れれば実質トークの時間は1時間強、意外とすぐに終わってしまいます。 <a href="http://www.sankakuyama.co.jp/" data-mce-href="http://w…

北海道知事選公開討論会観戦記、もしくはイグナティエフの新刊。

去る3月19日に、札幌は道新ホールで現職知事の高橋はるみ候補者と共産党を含む野党からの公式・非公式の推薦を獲得した佐藤のりゆき候補者の公開討論会を傍聴してきました。北海道新聞の招待企画で、そうでもなければ、深夜のテレビ放送か、ネットで観たに…

曽野綾子氏が問題提起したこと

論じ尽くされた感はありますが、先の産経新聞での曽野綾子氏のコラム「『適度な距離』保ち受け入れ」での南アフリカのアパルトヘイトに賛意を示すような言説はもちろん容認されるようなものではないでしょうし、それ以上に南アで融和に努めてきた関係者の努…

テロと左派、フランスより。

先のマイケル・ウォルツァーの論考「イスラム主義と左派」に続いて、Slate.frに掲載されたフランスの政治学者ローラン・ブヴェの「シャルリ・エブドという最悪の事態を二度と生まないために必要なこと」をシノドスにアップしてもらいました(岡本託さんとの…

「ポスト世俗化」論からみる宗教原理主義の逆説

時事通信が発行する電子媒体E-Worldに「宗教への深い理解が唯一の道─宗教原理主義はなぜはびこっているのか?」と題した論考を寄せました(会員制 時事通信社 Janet提供。そのうち朝日新聞のWEB新書内でも単独購入できるそうですhttp://astand.asahi.co…